この記事を読むとわかること
- 大物がヒットした直後に慌てないための状況判断とドラグ調整
- 大物を海面まで浮かせるポンピングの具体的な手順とコツ
- 掛けた大物を逃さない玉網入れから甲板へ取り込むまでの流れ
はじめに|海面まで浮かせても、まだ終わりではない
初心者のお客様が最も慌てるのは、大物がヒットした直後でした。大物とのやり取りは、魚が掛かった場所、魚の走り方、ラインの出方によって対応が変わります。
さらに、せっかく海面まで浮かせても、最後の玉網入れに失敗すれば大物を取り逃がします。本書では、私が遊漁船船長として実際に行ってきた判断と声かけを、ヒットから甲板への取り込みまでの順番で説明します。
| 最初に覚える大原則 大物が掛かったら、まず『根に近いか』『根掛かりの心配がない場所か』を判断します。最初の対応は一律ではありません。 |
1|大物がヒットした直後の状況判断
STEP 1 根に近い場合ラインが漁礁や岩場の根に絡むと、魚を取り込むことはほとんどできません。そのため、魚に根へ入られる前に、少しでも上へ離すことを最優先にします。初心者には、まずラインを巻くことに集中してもらいます。
STEP 2 根掛かりの心配がない場合無理に巻き上げるのではなく、魚の強い引きをドラグで受け止めます。初心者が使っている電動リールのドラグを、ラインの出方を見ながら適切な状態へ調整します。
| SUU船長の判断 同じ大物でも、根に近い場所と、根の心配がない場所では対応が違います。場所を見ずに一律の操作をしないことが重要です。 |
2|ドラグ調整のGOODサイン
魚が強く引いたとき、リールから『ジィー、ジィー、ジィー』と音がして、ラインが少しずつ出ていく状態がGOODです。
| GOOD! 魚が引っ張ったときだけ『ジィー、ジィー、ジィー』と少しずつラインが出る状態。 |
| ラインの状態 | 判断 |
| まったく出ない | ドラグが強い可能性があります。魚の引きとリールを見て調整します。 |
| 勢いよく出続ける | ドラグが緩い可能性があります。魚の走りを見ながら調整します。 |
| 強く引いた時だけ少しずつ出る | SUU船長がGOODと判断していた状態です。 |
初心者が自分で判断できない場合は、慣れた人がそばで魚の引き、ドラグ音、ラインの出方を確認しながら、ドラグ操作を一つずつ指示します。
3|大物を海面まで浮かせるポンピング
魚の強い走りが止まったら、ポンピングで少しずつ海面まで浮かせます。
STEP 1 竿をゆっくり立てる
魚が強く引いていない時に、竿を真上近くまでゆっくり立てます。この動作は、初心者でも比較的うまくできます。
STEP 2 素早く下げながら巻く
竿を海面方向へ素早く下げながら、同時にラインを巻き取ります。竿を下げる動きとリールを巻く動きを合わせ、できるだけ短時間で終えます。
STEP 3 同じ動きを繰り返す
『ゆっくり立てる→素早く下げながら巻く』を繰り返し、大物を海面へ近づけます。
| なぜ素早く下げるのか ラインの先には大物が掛かっており、次に魚がどのような動きをするか分かりません。魚が再び走り出す前に、竿を下げてラインを巻く動作を可能な限り短時間で終えるためです。 |
| ここが難所 竿だけを先に下げず、下げる動作と巻き取りを同時に行います。ここでラインが絡むと大変なことになります。 |
釣行前に必ず練習する
大物が掛かってから初めて覚えようとすると、二つの操作を同時に行うため難しくなります。時間を見つけて、大物が掛かった状況を頭に描きながら、竿とリールを実際に何度か操作してマスターすることを強くおすすめします。
| 確認 | 釣行前の練習項目 |
| □ | 魚の動きを頭に描いて竿をゆっくり立てる |
| □ | 竿を素早く下げながら同時にリールを巻く |
| □ | 同じ動作を数回繰り返し、体で覚える |
4|青物が走ったときは周囲も動く
青物はヒットすると走る魚です。ほかの仕掛けとの絡みや、取り込みの邪魔を防ぐため、ヒットした人の両隣には、仕掛けを回収し、竿を邪魔にならない場所へ片づけてもらいます。
鯛は青物のように走らないため、ヒットした人の両隣には、基本的にそのまま釣りを続けてもらっていました。魚種によって、周囲への指示も変えます。
5|大物を逃さない玉網での取り込み
| 最後の肝 せっかく海面まで浮かせた大物も、ここで失敗すれば取り逃がします。玉網入れは、慣れている人が担当します。 |
STEP 1 魚を玉網の近くへ誘導する
釣り人に、魚を玉網のある場所まで持ってきてもらいます。
このとき、最初から玉網を海へ向けて構えてはいけません。上がってきた魚が玉網を見て怯え、急に暴れ出すことがあるからです。玉網を船の外へ向けて構えるのは、魚が海面を切る寸前です。初心者は早くから玉網を構えがちですが、私はこの失敗で何匹もの魚を逃がした経験があります。
STEP 2 海面すれすれまで浮かせる
魚が近くに来たら、「海面すれすれまで魚を浮かせて」と声をかけます。
STEP 3 頭から一気に玉網へ入れる
玉網ですくえる『今だ』という瞬間を見極め、一気に魚の頭から玉網へ入れます。
STEP 4 魚が入ったことを確認する
魚が玉網に入ったことを確認してから、甲板まで取り込みます。
玉網へ入れて甲板まで上げる間、釣り人は竿とラインの状態を見ながら対応します。私が船長をしていた頃は、ここまでやり取りできた釣り人なら、特別な指示をしなくても自分でうまく処置していました。
| SUU船長の経験 この一連の玉網入れを何回も練習して完全に身につけていたため、大物を取り逃がしたことはありません。 |
6|ヒットから甲板までの10項目
| 1 | 根に近い–か、根掛かりの心配がない場所かを判断する |
| 2 | 根に近ければ、魚を少しでも上へ離すため巻くことに集中する |
| 3 | 根の心配がなければ、ドラグで強い引きを受け止める |
| 4 | 『ジィー』という音とラインの出方を確認する |
| 5 | 魚の走りが止まったらポンピングを始める |
| 6 | ゆっくり竿を立て、素早く下げながら巻く |
| 7 | 青物なら、ヒットした人の両隣の仕掛けと竿を片づけてもらう |
| 8 | 魚を玉網の近くへ誘導する |
| 9 | 魚が海面を切る寸前に玉網を構え、魚を頭から入れる |
| 10 | 魚が玉網に入ったことを確認して甲板へ取り込む |
最後に
大物とのやり取りは、知識を読むだけでは身につきません。釣行前に、魚とのやり取りを頭の中で繰り返し思い描いてください。
魚が強く引いていない時に、竿をゆっくり真上近くまで立てて、魚を約1メートル浮上させます。次に、竿を素早く下げながら緩んだラインを巻き取り、さらに約2メートル魚との距離を縮めます。
この動作を繰り返せば、ポンピング1回で約3メートル魚を浮上させることができます。釣行前にポンピングの動作を身につけておけば、大物がヒットした場面でも、慌てず瞬時に行動できます。
私が船長として大切にしてきた信念は、「取り込める魚は逃がさず、完全に取り込む」ことです。
この一冊が、初心者の方がせっかく掛けた大物を逃さず、喜びの一尾を甲板へ取り込む助けになれば幸いです。
SUU船長(元遊漁船船長・船長歴37年
※海況、魚種、仕掛け、船の状況によって対応は変わります。実釣時は、乗船している船の船長の指示を優先してください。
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